会長より

キャリア・パスポートを通じたキャリア教育の推進

埼玉県高等学校進路指導研究会会長 内 田  靖

(埼玉県立浦和商業高等学校長)

 中教審「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成23年1月31日)にあるとおり、キャリアとは「人が、生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なり速なりや積み重ねである。そして、キャリア・パスポートとは「自らの学習状況やキャリア形成を見通したり、振り返ったりしながら、自身の変容や成長を自己評価できるよう工夫されたポートフォリオ(書類をまとめたもの)のこと」(括弧内は筆者付加)である。

 埼玉県教育委員会は、このキャリア・パスポート(以下、「キャリパス」)について、令和2年度より全ての小学校、中学校、高等学校において実施することとしている。そして、令和3年度からは、中学校から高等学校へキャリパスが引き継がれることになる。

 昨年度の本欄にも記載したが、各学校に存するたくさんの目標やそれを実現するための計画は全てそれぞれが連鎖しながら、学校が掲げる教育目標へと収斂していく。学校においては、最高目標である教育目標から逸脱した下位目標は存在すべきではない。そして、各種目標を実現する各種計画も同じように教育目標の実現計画に収斂していくべきである。

 それでは、県立浦和商業高等学校(以下、「浦商」)における、キャリパスを用いたキャリア教育について、一連の目標や計画の連鎖の中に落とし込んでみたい。

 浦商の目指す学校像は「グローバルに展開する経済社会において、多様な分野で幅広く活躍する商業人材の育成」である。浦商では、この「多様な分野で幅広く活躍する商業人材」を育成するためのキャリア教育を行う。

 そして、重点目標の「社会人として必要な知識・技能や教養とマナー」を習得させるため、検定・資格試験を通じて知識等を高めていく。加えて、重点目標の「生涯に渡り主体的に行動できる人材」を育成するため、知識・技能等を活用する探究活動を推進し、問題解決能力を涵養していく。つまり、これら知識習得活動と探究活動は浦商のキャリア教育の両輪なのである。

 ところで、この両輪をつなぐためには論理力が必要である。なぜならば、相手の話や文章を整理して理解し、自分の考えを筋道立ててわかりやすく伝える論理力がなければ、主体的に多様な人々が協働して行う探究活動は効果的効率的に実施できないからである。

 そこで、キャリア教育において、知識習得活動と探究活動を論理力で強力につなげていく。具体的には、R80やPREP、3C分析などの論理力育成ツールを利活用しながら、知識習得活動で得た知識・技能を探究活動において効果的効率的に応用できるような資質・能力を育成・涵養する。これらの資質・能力の変容や成長をキャリパスによって評価・育成することが、目指す学校像にある「多様な分野で幅広く活躍する商業人材の育成」につながると考える。

 末筆となるが、会員校においては、キャリパスの有効活用によって、生徒が自身の学習状況やキャリア形成を振り返ることでさらなる成長や変容につなげられることを期待している。